研究概要 |
ナノメーターオーダーからミクロンオーダーまでの規則的な凹凸形状を表面構造に持つ伝熱面で,熱伝達の高機能化を実現するための基礎研究として,対流熱伝達の流動抵抗減,熱伝達促進等の可能性につき,実験と理論的研究を進めた。まず,実験的に微細凹凸の構造変化の液体に対する流動抵抗の変化を実験的に調べた。層流域で摩擦抵抗減効果を示す超はっ水性の存在が知られているが,超微細凹凸面として3μmの凹凸面や,はっ水性面などを用いた実験で低減効果は確認できなかった。この超はっ水性面での流動抵抗低減効果のメカニズムが表面微細凹凸面内の気体によって固体壁面での流体のすべりが生じているためであろうと考えた。そして,表面自由エネルギーの最小小さいPTFE(4つツ化エチレン)に微細な網目状構造を持たせた膜について実験を行った。この膜の網目状構造は0.1μmから1.0μmの空孔を持っており,気体は通過できるが,水は通さないという特徴を持っている。従って水との接触面に気体が存在する。空孔径が0.5μm以下のPTFE膜は,比較のため測定した平滑なシリコン面とほぼ同様な抵抗を示したが,空孔径が0.5μm以上のPTFE膜では平滑なシリコン面より最大10%の流動抵抗低減効果を示した。そのメカニズムを考察し,低減効果を示したPTFE膜の場合,固体面上での液体が気体と接触する面積が固体表面積を示める割合が50%以上に存在することが一つの要因であることを明らかにした。この実験と並行して,微細凹凸のある固体,液体界面の理論的検討をすすめた。
|