ナノメーターからミクロンオーダーまでの凹凸形状を表面構造に持つ伝熱面で、熱伝達の高機能化を実現するための基礎研究として、これら表面構造における流動抵抗低減、熱伝達促進の可能性につき実験と理論的研究によりメカニズムの解明を行うことを目的として研究を行った。まず超微細凹凸による流動抵抗低減現象に関する実験的研究を行い、超微細凹凸面では最高で10%近くの抵抗低減があることを確認した。さらに、コーティングによりはっ水性を有する面でも5%得程度の抵抗低減の結果を得た。次いで超微細凹凸面の強制対流熱伝達に関する実験を行い、超微細凹凸面が平滑面を仮定した計算値より数℃高い温度分布を示すことより、この面が熱抵抗を有すること、この要因として低表面エネルギーの固液界面に滞留する空気層の存在が有力であること、等の成果を得て検討を行った。理論的研究として、超微細凹凸やコーティングによるはっ水性を有する面での流動抵抗低減に関して、この要因を固体表面の低表面エネルギーによる固液分子間の相互作用の低下によるものとして、分子動力学手法による壁面近傍の液体分子の運動の解析を行った。すなわち分子直径の約20倍の2平板間に1000個の液体分子を満たし壁をスライドさせて流れを生じさせた。そして簡単のため水分子の代わりにLennard Jones単原子分子を用い、固液間のエネルギーパラメータを液体分子間の値の0.5として5%、0.1として21%の固液界面でのすべりの発生を示すことができた。計算上の限界から抵抗低減を定量的に説明するまでにはいかなかったが、その可能性を示唆する結果である。以上、超微細凹凸を有する表面での熱伝達の高機能化に関し実験的及び理論的に新しい成果を得ることができた。
|