研究概要 |
平成10年度当初計画に概ね従って、NO分子を対象とした縮退四波混合分光法(DFWM)の雰囲気と温度に対する基本特性のデータを取得し、理論的定式化を行うことができた。 実験装置に関しては、226nm付近の紫外レーザパルスビームを三分割した入射光と、指向性の強い信号光ビームが四角錘の4辺を形成するforward box配置を採用し、常温で分圧1mTorr未満のNOの検出感度を得ることができた。高感度を得るために、本研究で用いた特に狭帯域ではない光源では三つの入射光の交叉点までの光路長をそのコヒーレンス長以内に揃えることが重要であることが判明した。信号強度の雰囲気圧力依存に関して、消光係数の大きいCO2,O2と消光の無視できるHe,N2とではやや前者の方が依存性が大きいながらも、大差なく雰囲気圧と共に信号が減衰する特性が得られた。これは光混合過程への緩和項として消光過程以外に回転緩和や位相緩和といったどの衝突分子でも一様に生じる過程が寄与しているためと考えられ、それらをドップラー幅や衝突線幅といった分光特性と結び付けて圧力依存として表現することを本研究として提案した。このモデルにより入射光強度により圧力依存曲線形状が異なることも説明でき、対象圧力毎に検出感度を最適にする入射光強度が与えられる。 特定の回転線の信号強度の温度依存性についてもその回転準位のボルツマン分布による占有数の二乗となる基本則に乗じてさらに絶対温度の約-1乗に比例する項が実験的に認められ、その項が線中心の吸光係数の温度依存で表されることを見出した。圧力依存と温度依存を示した概念は共通であり、以上の成果に対して雑誌論文を投稿中である。
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