本研究は混合液の沸騰過程における生成蒸気濃度に関する特性を明らかにすることを目的とする。二成分蒸気凝縮過程において、気液相平衡関係から凝縮成分の濃度はバルクの蒸気の濃度とは異なり凝縮液表面の温度に依存する。沸騰過程においても沸騰気泡内の気液界面温度に依存して、生成蒸気成分はバルク液との平衡濃度とは異なる可能性が考えられる。その値は核沸騰過程の気泡生成温度に依存するとともに、そのバルク液との濃度の非平衡は気泡生成、離脱過程とバルク液表面における凝縮の複合的な結果として決められる。しかし、昨年度の結果では、過熱度に対する液面上に上昇した生成蒸気がバルク液状態とほぼ平衡していた。これは気泡が液中を上昇する際にバルク液との物質拡散により、平衡状態に近づいてゆくことなどが考えられるが、これらの過程における濃度状態は明らかでない。したがって、本年度は気泡内生成蒸気に着目して実験を行い、生成蒸気濃度の沸騰条件による変化などを検討した。すなわち、高応答性熱電対(クロメル-アルメル、素線直径0.013mm)を用いて生成蒸気の温度を測定することにより、生成蒸気濃度を求めた。生成蒸気の局所的な平衡状態を仮定することにより、生成蒸気の温度から生成蒸気濃度が求めた。純水、水-エタノール混合液およびエタノールーアセトン混合液を用い、伝熱面過熱度、液体濃度を変化させて、核沸騰過程における生成蒸気泡温度の精密・高応答測定を行った。その結果、明らかに水-エタノール混合液の場合では純水と違いがあること、生成蒸気の飽和温度との温度差は伝熱面過熱度の増加とともに増加し、また伝熱面から離れるに従って減少してゆくが、過熱液層に比べて大きくないこと、および蒸気濃度は伝熱面過熱度の増大に伴って下降するが、量的にはあまり大きくないこと、などを明らかにした。
|