近年、気液二相サイクルの高効率化あるいは作動媒体の多様化などを目的として非共沸混合媒体の相変化特性を用いるサイクルの利用が計られてきており、混合媒体の気液相変化過程の特性把握が重要である。本研究では、混合液体の沸騰過程における沸騰条件が生成蒸気成分に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。水-エタノールおよびエタノールーアセトン混合液の2種類の作動流体を用いた細線群からの飽和プール核沸騰系におけるバルクの蒸気層内における蒸気濃度測定を行った。蒸気の露点と気液平衡関係による露点測定法と、赤外レーザー光の吸収性質を利用するレーザー吸光法の二種の測定法をもちいた。その結果、沸騰により生成するバルク蒸気層中の蒸気濃度は、伝熱面過熱度、液層高さなどの沸騰条件には依存せず、バルク液と平衡していることを明らかにした。次に、気泡生成・離脱過程における蒸気の温度・濃度変化を明らかにするため、生成蒸気温度の変化を測定した。加熱面上で生成した蒸気泡は、比較的大きな蒸気過熱度を有しているが、気泡の伝熱面からの離脱・上昇過程で、蒸気の成分選択的な凝縮が生じ、温度も低下してゆく。その結果、伝熱面から約3から5mm程度でバルク状態と平衡することがわかった。また、蒸気泡の温度変化は、蒸気泡生成からの経過時間によって整理されることを示した。以上から、沸騰と凝縮の生じている系では、蒸気層の濃度はバルク状態と平衡していることが明らかになった。
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