研究概要 |
地球温暖化ならびに環境保全の立場から,低燃費のディーゼル機関が注目されているが,ディーゼル機関から排出されるNOxや微粒子が大気汚染の原因にもなっている.本年度の研究においては,前年度行った実機関でのdeNOx燃焼に対し,モデル燃焼装置を用いてディーゼル燃焼過程でのdeNOx燃焼機構の解明を行った. まず,流動反応装置を用いた実験では,NO生成に重要な影響を及ぼす因子として温度,酸素濃度,滞留時間を変更して,炭化水素の熱分解・酸化中にNOを付加してNO分解反応を行わせた.その結果,熱分解炭化水素が存在するとNO濃度は,雰囲気温度が高いほど低減し,酸素が存在する場合は,酸化反応による反応ガス温度上昇によりNO低減率が高くなることが示された.また,滞留時間が長いほどNO低減率が高く,例えば雰囲気温度1500K,滞留時間50msの酸化雰囲気では82%のNO低減率を示した. つぎに,単発のディーゼル燃焼を模擬できる急速圧縮装置に全量ガスサンプリング法を適用して,ディーゼル燃焼過程中の熱分解炭化水素成分ならびにNO濃度の時間履歴を調べた.その結果,ディーゼル燃焼の着火遅れ期間中には既に燃料が熱分解し,燃料の低級化が進行することが示された.そして,NO濃度は燃焼の経過とともに上昇し,その後一定値になるが,高旋回流をともなう過濃燃焼場をつくると,いったん上昇したNO濃度が,拡散燃焼後期に減少することが示された.高速度カメラによる火炎観察とCFD計算によると,高旋回流により燃焼室内にリング状火炎が形成され,高当量比ではこの燃焼ガス内に燃料が追加されるため均一過濃燃焼場が形成されていることがわかった.このような燃焼形態により,燃料の熱分解成分によるNO低減機構が作用してNOが抑制されたと考えられる.
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