研究概要 |
本研究は,ねじりテープの管内への挿入によってポストドライアウト域の伝熱を促進させ蒸発管長低減に寄与することを目標とし,テープの効果的な挿入方法を検討するために有用な噴霧流域の数値実験モデルを開発することを目的とした.管内沸騰流の熱伝達および限界熱流束実験と,計算機を用いた数値解析を主体とした. まず,試験液体としてHFC134aを使用した水平流(質量速度100〜600kg/m^2s)の管内流沸騰熱伝達および圧力損失の実験を行った.その結果,(1)外径7mm,内径6.34mmの平滑管を用いて行った伝熱特性ならびに限界熱流束と限界クオリティの関係は,本研究者らがこれまでに得た実験結果と同じ傾向を示すこと,(2)平滑管内にステンレス製ねじりテープを挿入した場合のポストドライアウト域熱伝達の促進割合は,本研究者らがこれまでに得たCFCl13に対する実験結果と定性的に一致すること,が明らかになった. 次に,テープ挿入による旋回流の熱伝達を考察するため回転体における熱伝達に関する知見をまとめるとともに,ねじりテープ挿入管の伝熱特性の予測に有用な液滴挙動の数値モデルを提案した.すなわち,気流中に存在する単一液滴が伝熱面に衝突し,伝熱面から非定常熱伝導によって液滴へ熱が伝わる伝熱モデルに対し,気液界面での相変化を考慮したVOF法による液滴熱伝達の数値シミュレーションを試みた.その結果,(1)気液境界を含むセルを界面温度に定義すると熱移動の計算が実際の結果と大きく異なるものの,境界面での温度勾配を考えるとその計算は複雑になること,(2)液滴が付着し蒸発開始直後のシミュレーションは可能になるが,液滴の浮上に対する適切な条件を見出すことが困難であること,が明らかになった. さらに,管壁温度分布の簡便な測定方法として,不可逆性感温塗料を管外壁に塗布する方法を提案し,回転体の表面に対して行った実験から,その有効性を確かめた.
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