研究概要 |
強制対流下の熱移動は,主流に伴う大きなスケールの渦が壁面上を周期的にスイープするか,あるいは壁面上に衝突そして離脱を繰り返すことによって促進される.周期性がなく,かつ高周波成分の乱れが主流に加わっているだけでは,期待するほどの効果は期待できない.流路内の伝熱促進は壁より離して鈍頭物体を置き,後流にカルマン渦の周期性のある渦を作り,その際に壁側のカルマン渦に誘起された側渦とカルマン渦が向かい側の渦に相乗的に加わって衝突することで高められる.この側渦はカルマン渦放出と同じ周期であり,カルマン渦発生の限界に近い隙間で,この渦の効果は著しくなる.それより物体と壁面の隙間が小さくなると,流れは物体背面でゆったりとした動きの,隙間流れに干渉をする流れ場が形成される.壁面側の隙間流れは下流にいくにつれて,圧力が上昇するのに伴ってしだいに壁面からはく離する.このはく離流は周期性がないが,低周波でしかも物体背面の再循環的な流れのために大きなスケールのはく離渦になる.この渦は壁面の伝熱促進に大きく寄与する.物体を壁面上に置くと,物体上面からのはく離せん断層の流れは背面に大きな再循環流れを形成し,下部壁面に付着する.このせん断層は物体から剥がれた直後にせん断渦を生成し,下流になるにつれて大きなスケールの渦となり,さらに下流で主流速度の減衰に伴って先行する渦に合体する形でさらに大きなスケールになった渦を伴って,流れの幅方向に伸び縮みしながら下部壁に付着する.その渦は衝突後,壁面から離脱していく.周期性はもちろんなく,大きな渦の衝突効果と,渦の離脱が伝熱を促進させている.これらの現象を染料による流れと,赤外線映像装置による温度場の同時測定をすることで明らかにした.12年度での研究の成果を第38回日本伝熱シンポジュウムで講演発表をする.
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