研究概要 |
本研究は,ディーゼル機関において燃焼初期の予混合燃焼による急激な熱膨張によって生じる誘発乱流が,燃焼後期までの燃料と空気の微視混合および燃焼生成物であるすすや窒素酸化物の生成に対して及ぼす影響を明らかにすることを目的に数値シミュレーションおよび実験を実施した.当該年度で得られた研究成果を以下にまとめる. 1. 既有の直接噴射式ディーゼル機関用の多次元数値シミュレーションコードにおける燃焼モデルを実機関での急激な初期燃焼が表現できるように改良し,これによって,噴口径や噴射圧力を変更して噴射率を制御したさいの流動や燃焼をシミュレートした.その結果,噴口径や噴射圧力を変更して燃焼中の乱れ運動エネルギーk/Cm^2(k:乱れの運動エネルギー,Cm:平均ピストン速度)の計算セル毎の時間経過を調べた結果,初期燃焼によって誘発される乱れが強いほど,噴射終了後も乱れエネルギーは強く,そのためスートの酸化反応が促進することが予測できた. 2. 噴孔径d=0.08mmの微細多噴孔ノズルを試作し,ノズル径が燃焼および排気特性に及ぼす影響を実験的に調査した.その結果,d=0.08mmの微細噴孔ノズルを用いた実験によれば,同一総噴孔面積であるd=0.14mmの場合に比較して窒素酸化物濃度が低く排気煙濃度が高い.この理由は,噴孔径が小さいほど着火遅れが短く初期熱発生率が低くなり燃焼ガス温度が低下することと,着火後に噴射された燃料・空気の混合が悪くなったためと推察された.したがって,初期燃焼はある程度強い方が良いと言える. 3. 吸気終了直後および上死点付近に分けて噴射した2段分割早期燃料噴射によって初期燃焼の影響を実験的に調査した結果,2段分割早期燃料噴射によって,超低NOx濃度のまま燃費向上の見込みがあることや,通常のディーゼル燃焼ではほとんど排出されないアルデヒド類の排出濃度が高いことが明らかになった.
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