研究概要 |
紙を生成する際に,溶解したパルプを含む液体を移動する長網に乗せ,紙を漉く抄紙プロセスと呼ばれている工程がある.水は網目を通過して,パルプは長網の網目を通過できずに長網の上に残る.その際に,長網が移動しながら振動する現象が現れたが,どのようなメカニズムで発生しているのか分からなかった. 昨年度までの研究では,スケールモデルの実験により,振動発生の主要なパラメーターを実験的に明らかにした.そこで,本年度は理論解析を主として研究を行った. 長網に相当するシートと水の運動方程式を導き出したが,解析的に解くことができないため,近似解を数値的に求めた.シートの振幅については,水の流速とシートの移動速度を一致させたとき,数値解析結果と実験結果は定性的に比較的よく一致している事を確認した. さらに,理論解析により求めた特性根は,流速が増加するとその実部が大きくなり,不安定性が増し,振動が発散しやすくなることが分った.また張力が減少した場合,シートの長さを長くした場合も同様に不安定性が増すことが分った.この傾向は,昨年度の実験より得られた結果と一致している. シートと水の層厚の変動成分を比べると,水の層厚はシートの振動より約1/4周期位相が進んでいた.このことより,水の層厚はシートに作用する圧力に比例すると考えられるので,水の層厚の変化がシートの振動を励起していることが分った.
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