研究概要 |
本研究の目標は,大気や海洋,生命,経済システムなどの複雑系のダイナミクスと制御に関する基礎的な研究として,これらのモデルと考えられる連成振動系に対する非線形現象の理論解析手法およびその有効なカオス制御法を確立することである.今年度は以下の研究成果が得られた. (1)サドル・センターを有する2自由度ハミルトン系を取りあげ,サドル・センター近傍の周期軌道の安定多様体と不安定多様体が横断的に交差してカオス現象が起こり,系が非可積分となることを証明するための解析手法を提案した.さらに,本手法を適用してサドル・センターを有するある広いクラスの2自由度ハミルトン系が非可積分となることを示した. (2)(1)の結果を多自由度ハミルトン系の場合に拡張し,サドル・センター近傍の不変トーラスの安定多様体と不安定多様体が横断的に交差してカオス現象が起こり,系が非可積分となることを証明するための解析手法を提案した.さらに,本手法を減衰力と外力が作用しない座屈ばりの任意自由度の離散モデルに対して適用し,この系が非可積分であることを示した. (3)2つの振子からなる連成振動系を取りあげ,研究代表者が提案している手法を適用するなどしてさまざまな分岐現象,カオス現象および同期現象が起こることを理論的に明らかにした.また,実験装置を製作し,数値シミュレーションおよび実験を行って理論結果の有効性を検証した.
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