研究概要 |
自由音場に置かれた騒音源の近傍に受動音源として作用する音響管などを付加すれば,音源の放射効率を低下させて騒音放射を低減させることができる.しかし,十分な低減を得るためには騒音源を囲むように多くの付加音源を配置する必要がある.機械の操作性や機能を損なわないために付加音源の配置を騒音源を含む平面内に限定すれば,騒音源を囲む閉曲線上に密に並べなければならない.その極限である閉曲線上に連続した開口部を持つ分布形消音器を用いれば,最大の騒音低減量が期待される.そこで本研究では,そのような分布形消音器に必要とされる音響特性を求め,その消音性能について検討する.本年度は,分布形消音器の開口部は円周状とし,その中心に騒音源の点音源が置かれているものとして検討した,また,消音器空洞部の形状は,その音響特性の解析的な扱いができるように,円筒を取り上げた.まず,分布形消音器の音響インピーダンスを求め,音場全体に放射される音響パワーの式を導いた.得られた式から音響パワーを最小にする消音器の音響インピーダンスとその最小値を求め,円筒状分布形消音器に関する設計式を導いた.これらの解析に基づいて音場や分布形消音器の消音特性に関する数値計算を行い,分布形消音器を用いた場合の消音性能の特徴を調べた.その結果,消音器の半径が波長より短い場合に音響パワーの低減が可能であること,音響パワーの最小値は消音器の半径の4乗にほぼ比例すること,消音器開口部の幅が広いほど音響パワーの有効な低減が得られる周波数帯域が広くなることなどが分かった.さらに,試作したアクリルパイプ製分布形消音器とハンドヘルド音響インテンシティシステム(設備備品)を用いて実験を行い,本解析結果が妥当なものであることを定性的に確認した.ただし,消音器の側壁の振動の影響などがあるものと思われ,現在のところ定量的な一致までは得られていない.
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