研究概要 |
本研究では,構造物が損傷した場合にその動特性をウェーブレット変換によって同定することを目的にする。特に,ここではパラメトリックなシステム同定,すなわち質量,剛性,減衰のような物理量(構造パラメータ)の変化の様子を捉えるのに,時間-周波数解析の可能なウェーブレット解析を用いた手法を提案し,数値シミュレーションとモデルを用いた実験によりその有効性を明らかにする。本同定手法は,速度応答,加速度応答を計測しなくても変位応答の計測のみで,構造パラメータが算出されるという特徴を持ち,さらにウェーブレット変換は時間情報も得ることができるので時間と共に変化する構造パラメータをも同定できるという利点もある。 本年度は,1層モデルを用いて振動実験を行い,以下のような成果を得た。なお,入力波は帯域制限白色雑音である。 1.1層モデルの同定結果より,系の固有振動数については良好な推定結果が得られた。 2.1層モデルの同定結果より,系の減衰比については,他の手法(ハーフパワー法)の結果と比較すると,あり精度が良くないことがわかった。特に減衰比が小さいほど推定結果が悪化していることがわかった。これは,今後の課題である。 3.同定精度は,データのサンプリング時間に依存するので,ウェーブレット変換の欠点を克服するためには適切なサンプリング時間を設定する必要があることがわかった。
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