研究概要 |
本研究は、線形な多入出力システムに対する多変数制御器を、周波数領域上の有限個の周波数応答から、制御対象の厳密な数学モデルを利用することなく決定しようとしたものである。主な研究成果を以下に示す。 1.理論的展開。筆者らは既に最小二乗法に基づくコントローラパラメータ調整法について提案を行っていたが、本研究では、それを以下の場合に拡張した。1つは、分散型制御系としてコントローラが設計できるようにしたことであり、2つ目は、これまで検討されていなかった制御系の安定性を保証するように、パラメータ調整問題を制約条件付2次計画法に置き換え自動的に安定性の保証された多変数PIDコントローラパラメータ調整が周波数領域上で実行できるようにしたことである。前者は、JSME Int.Journalで報告し、後者については北京で開催された第14回IFAC(国際自動制御連盟)世界大会で発表している。 2.実験的検討。上述の手法は、倉庫内搬送車のアクティブ振動制御に応用され有効であることが検証された。この搬送車は構造上剛性を高めることができないシステムであり,高速で使用する場合の振動発生が問題となる。ここでは,3入出力系として把握し、9個の線形コントローラをスペクトル解析から得られたデータで一挙にチューニングすることで優れた制振効果が得られることを確認した。また、同様の手法を多層構造物の振動制御に適用して好結果を得ている。上記成果は、日本機械学会論文集(C編),Asia-Pacific振動会議等で報告した。 以上研究課題に即し、理論的展開とその実用性に関する検証を行い、所期の成果を得た。
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