通常、ロボット経路制御などのメカニカルシステムの制御においては最終的には与えられた経路を追従することが要求され、その速度は経路追従を満たす範囲でできるだけ速いのが望ましい。このように経路制御はサーボ系の性能を考慮した上で、サーボ系にとって無理無駄がないように行う必要がある。さらには、あらかじめ目標物や障害物などとの距離と方向の情報が既知であったり、わからない場合でも画像センサや超音波センサなどを用いたアクティブセンシングを行うと、事前に未来情報(予見情報)として得ることができる。このような観点から理想的な経路制御を行うためには未来情報を獲得するためのセンシング、獲得した未来情報を利用した経路制御と言った要素をトータルシステムとして扱うことが必要であり、本研究ではこの一般的手法とその応用について検討を行うことが目的である。 この中で本年度は未来情報が既知の場合の新しい経路制御の理論検討について主に行った。この際、単に各軸の応答を改善することによって経路応答を改善するのではなく、本質的な経路制御を実現するという観点から検討を行った。そしてこの目標経路が直線経路であることが予見できる場合には、座標軸の伸縮により各軸を常に一定の比率に同期させる最適同期化経路制御法を提案した。さらにこれを目標経路が円や直線なども含む任意曲線で与えられることが予見できる場合に発展させたベクトル分解経路制御法も提案した。これは経路応答をゲイン成分と位相成分にベクトル的に分解し、それぞれに独立な制御系を構成し、ゲイン成分制御系により経路追従を行い、位相成分制御系により移動を行う手法である。これらに対してシミュレーションおよび実験的検討により外乱などに対しても良好な経路応答が得られることを確認した。
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