研究概要 |
本研究は、すべり送りねじを用いた位置決め機構に意図的に線形的な弾性変換機能を付加することで、位置決め性能を飛躍的に改善する方法を提案し、ナノメータレベルの超精密位置決めに対する本方法の効果と問題点を実験的に詳しく検証するとともに、本機構に適した制御方法を探索することを目的とする。昨年度までに、弾性要素の組込みを目的とした位置決め実験システムを新たに構成し、その基本特性の概略を実験的に明らかにした。そこで本年度は弾性要素の特性を詳細に測定・評価するとともに、本システムによる位置決め実験を系統的に行い、最適な制御方法と位置決め精度の限界を追求することを目的とした。 まず、弾性要素単体の特性を詳細に評価するために簡単な実験装置を構成し、ねじりトルクと軸方向変位の関係を測定した。ヒンジ形状の異なる3種類の弾性要素を設計製作し、それらの剛性の設計値と測定値を比較したところ、いずれも実測値の方が剛性が低いという結果が得られた。次に勢作した弾性要素を昨年度構成した位置決め機構に組み込み、モータトルクとテーブル変位の関係を測定したところ、弾性要素単体の剛性よりも2倍程度高い値となり、転がり案内要素の非線形ばね特性の影響があることが明らかになった。 弾性要素を用いた位置決めシステムの制御系として、PI動作を基本とした制御アルゴリズムを作成した。目標値に対する偏差に対応して粗動、微動および極微動の領域に分割し、それぞれの領域に対して制御パラメータを予め設定し、それらのパラメータを順次切り換える方式とした。また各パラメータの最適値を、粗動、微動、極微動の順に系統的に定める方法を示した。また本システムの位置決め性能を実験的に検討したところ、位置決め分解能は5nm,20mmステップの位置決め誤差は6nm以下であることが明らかとなり、弾性変換要素の優れた性能を示すことができた。
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