研究概要 |
研究代表者らは,ヒトの巧みな感覚情報処理を模型化してロボット・メカトロ機器へ応用する研究を進めてきた.特に,ヒトの滑りの感覚情報処理は,ロボットのそれと比較して遅いため,ヒトの滑りの覚情報処理機構を解明しアルゴリズムとして実現できれば,処理速度の比較的遅い計測制御系を用いても把握力の動的制御が可能となると期待される. そこで本研究では,ヒトの滑り覚認識機構の解明を目的として,滑り覚呈示装置と筋電図計を用いて一連の心理物理実験を行った.実験では,被験者が把持するプローブの表面状態に対する閾値の依存性,並びに滑り力,筋電位,把持力の間の関係を調査した.本年度の成果を以下に要約する. (1) モータドライブのXステージと力覚センサにより一定の滑り力を発生する装置を開発するとともに,PEST法により滑り覚の閾値を計測する実験方法を確立した. (2) 6人の被験者に対し滑り覚認識実験を繰り返し実施し,Weber比を求めた結果,滑り力が2Nの時は0.1とやや大きいが,十分大きい滑り力では0.07近傍で一定となった. (3) プローブ表面の摩擦係数が大きいほど,被験者の滑り力の判別精度が向上したことから,滑り覚の受容器はせん断応力を獲得しているものと推測した. (4) 筋電位と把持力の関係を調査した結果,両者に線形関係があることから,今後把持力が計測できない場合に筋電位から把持力を同定できることがわかった.
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