計算機シミュレーションにより、磁壁が規則的な運動をする領域とカオス運動する領域とをパラメータ空間において予想した。磁壁運動を支配するパラメータには、磁壁質量、制動係数、復元力係数、外部磁界振幅と周波数があげられる。工学的に最も重要な制御パラメータである外部磁界の振幅と周波数からなる2次元空間では、カオス運動領域と規則運動領域が交互に現れることがわかった。また、磁性材料の種類に依存する復元力係数と磁界振幅からなる2次元空間においても、カオス運動領域が、規則運動領域の中に分布することが、明らかになった。 これらの領域図により、デバイスのノイズや誤動作を避けるための設計に役立つ基礎資料が得られた。 次に磁壁の運動に重要な関連を持つ、磁壁の微細構造を調べるため主要設備である磁気力顕微鏡ヘッド(MFMヘッド)を購入し、立ち上げを行った。この装置により磁壁が、ブロッホ磁壁かネール磁壁かを、またブロッホラインの数と配置について調べた。また、材料中のポテンシャルの変動の測定を行った。 これらの予想とデータに基づいて、磁壁を外部磁界により駆動し、運動を調べた。周波数が低い領域では、磁区観察装置を用いて実際の磁壁運動の位置と速度を観察した。高周波数領域では、磁壁の運動をリアルタイムで観察することは困難なので、磁壁運動の振幅を計測し、運動状態を推測した。 以上により、次年度の目的である、高精度の磁壁運動モデル構築のための基礎資料が得られた。
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