本研究においては、高温超電導ケーブルの絶縁方式の一つとして、従来の発想とは異なる絶縁紙-氷複合絶縁系を考案し、従来技術の延長としての絶縁紙-液体窒素複合絶縁系の絶縁特性と比較しつつ、極低温電気絶縁構成としての可能性を検討してきた。その結果、絶縁紙-液体窒素複合絶縁系においては、液体窒素の気化により絶縁紙内部に微小気泡が残留し、その内部で部分放電が発生し易いことがわかった。そこで我々は、絶縁紙内部の空間を氷で満たし電極間の液体窒素を極力排除した絶縁紙-氷複合絶縁系を考案した。水分を含浸した絶縁紙を液体窒素中で氷結させた時の絶縁破壊特性について研究を行った結果、氷を含むことにより破壊電圧が上昇し、自己回復性破壊を示すことがわかった。これは、氷でセルロース間の空間を満たすことにより、微小気泡の成長が抑制され部分放電が発生しにくいためであると考えられる。さらに本研究の成果として絶縁紙の種類およぴ密度の影響を調べたところ絶縁紙材質の差が絶縁破壊の強さに余り影響しないこと、密度の高い絶縁紙が絶縁紙-氷複合系の絶縁性能を向上させ、氷のクラック状態が絶縁破壊に影響を与えるわかった。これらの事実、ならびに、絶縁紙や氷の誘電率、tanδは極低温では双極子運動の凍結により大幅に低下することを考えれば絶縁紙-氷複合絶縁系は極低温絶縁機構の有力候補の一つとなり得る。
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