研究概要 |
本研究は、電圧源を電流源に容易に変換できるイミタンス変換理論を高周波電力変換の技術分野に適用し、高周波電力の利用に新しい道を開くことを目的とする。本年度の研究計画は、イミタンス変換作用を持つインバータ回路の製作を製作してその基本特性と動作範囲を明らかにし、さらにその動作範囲の拡張方法について検討を行うことであり、その成果は以下に要約される。 1. 1/4波長同軸線路を用いたインバータ装置の製作と高輝度放電灯装置への応用 分布定数線路として最も普及している通信用同軸線路とパワーMOSFETを適用した動作周波数が1〜2MHzの電圧形ハーフブリッジインバータ回路とを組み合わせたインバータ装置を開発し、その出力端から高周波電流源が得られることを確認した。さらに、これを高輝度放電灯の点灯装置に適用し、良好な点灯性能が得られることを確認した。 2. イミタンス変換形変換回路の動作周波数の拡大化 通常のイミタンス変換作用は特定の周波数条件の元でしか得られないと言う欠点をもつ。これを改善する手法として、線路長がわずかに異なる2つの分布定数線路を用いて動作周波数範囲を拡大する方法を試みた。すなわち、二つの分布定数線路それぞれの送電端は直列に、受電端は並列に接続する方式を考案し、そのイミタンス特性を計算および実験で評価した,その結果、動作可能な周波数範囲を従来方式に比べて約2倍まで拡大できることを明らかにした。 3. イミタンス変換要素の小形化 通常の同軸線路を分布定数線路として用いた場合、1〜2MHz程度の周波数において1/4波長条件を満たす物理的な長さは20〜50m程度となり、実用的な大きさを超過してしまう。そこで、従来の同軸線路とは異なる構造と伝搬定数を持ち、物理長を短縮できる新しい分布定数線路の基礎検討を行った。今回は、高周波誘電体フィルムと薄銅フイルムを用いた平行平板型線路の試作、および特性定数と線路短縮効果の測定を行い,、イミタンス変換要素の小形化のための課題を抽出・整理した。 なお、上記の研究成果は研究論文にまとめ、国内外の学会・研究会等に発表した。
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