研究概要 |
本研究は,電圧源を電流源に容易に変換できる,いわゆるイミタンス変換理論を高周波電力変換の技術分野に適用し,高周波電力の利用に新しい道を開くことを目的とする。本年度は本研究の最終年度として,従来までの研究成果の結実と総括を主眼に置いた。研究成果は以下のように要約される。 1.イミタンス変換要素を適用した13.56MHz高周波電源の開発。 半導体の製造プロセスで用いられるプラズマ発生装置として13.56MHz高周波電源が使用されるが,従来ではアナログ発振方式が製造されていた。しかし,この方式は変換効率が非常に低くその改善が求められていた。そこで,イミタンス変換要素の持つ電圧-電流変換作用と周波数選択作用を活用して,4.52MHzで動作する電圧形インバータの方形波出力電圧成分に含有される第3高調波成分(13.56MHz)を選択的に電流源に変換する新しい高周波電源を開発し,実規模装置を用いてその有効性を立証した。 2.集中定数形イミタンス変換要素と太陽光発電用インバータの開発 分布定数線路として同軸線路を用いたイミタンス変換要素では,その動作周波数が数十KHz以下では,線路長が長くなり実用性に欠ける。そこで,集中定数部品であるリアクトルとコンデンサと梯子状に接続した集中定数形のイミタンス変換要素の研究を行い,LとCをπ形に接続した回路方式を考案した。この方式は,基本波成分と第3次高調波成分をイミタンス変換できるので,電圧-電流の変換波形は分布定数線路を用いた場合に非常に近い特性が得られる特徴がある。また,このπ-LC形イミタンス変換要素を用いた太陽光発電用の系統連系インバータを開発しその有効性を立証した。 3.薄膜インダクタ技術を用いたイミタンス変換要素の研究 同軸線路に代わる小形・軽量な分布定数形イミタンス変換要素を探索する目的で,薄膜インダクタ技術を応用したイミタンス変換要素の基礎研究を行った。薄膜には鉄系のマイロンを原料として真空蒸着技術によってガラス基板上に約数ミクロンの金属磁性膜の作製を行った。本年度の研究では磁性膜としての十分な時期特性が得られる迄には至らなかったが,今後の研究によって改良を加える予定である。また,イミタンス変換要素を構成するためには誘電体膜の作製も必要であるが,これに関しても今後の研究とする。
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