1.背景、目的 筆者らは、市販モータにはない多くの特長を有し、市販モータと同等の出力、効率を有し、かつ生産ラインの新設が不要の、平面磁路積層形パラメトリックモータの作製に成功した。しかし、低速回転領域でパラメトリック発振が不安定となる場合があること、またそのため設計法の確立が困難である等の問題がある。本研究の目的は、上記問題解決のために、固定子材質、寸法、形状とパラメトリック発振安定性との関係について検討を行い、パラメトリック発振の確立機構を明らかにすることである。 2. 本年の研究によって得られた新たな知見 (1) 材質に関して 固定子に方向性ケイ素鋼板を用い、磁化容易軸を磁極に平行とした場合は発振が不安定になり、磁極に対して45゚とした場合は安定となること。また、固定子に無方向性ケイ素鋼板を用いた場合は、上記前者の場合よりは安定となるが全体的に不安定となる。発振安定化には形状の変更が必要と考えられる。 (2) 寸法に関して 発振現象に影響を及ぼす内側環状磁路幅の異なる3台のモータについて実験を行った結果、発振安定とする最適寸法が得られた。出力、効率向上のためには幅の更なる増大が必要である。また外側環状磁路幅を8.7%増大したモータについて実験を行った結果、安定性に大きな変化はなく、効率が8%向上した。 (3) 形状に関して 固定子内磁束動作の測定結果から、内側環状磁路が非対称のモータについて実験を行った。発振安定性、出力、効率が大幅に向上した。また4極構造の場合にも発振は生じ、多極機の可能性も確認した。 (4) 理論的な裏付け 固定子のみの磁気回路から非線形微分方程式を導出し、固定子形状寸法が変化した場合の発振安定性を定性的に解明した。今後、回転子を含んだ負荷印加時の微分方程式を導出し、安定性の解明を行う。
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