研究目的 本研究では、大気圧中の棒対平板電極間にしきい値未満の直流電圧を印加しておき、そのギャップ中にパルスレーザによるプラズマを生成して放電を誘導する装置を用いる。この電界ギャップ中で、YAGレーザ(波長=532nm)プラズマとCO_2レーザ(波長=10.6μm)プラズマを時間・空間的に相対的な変化において各一個ずつ生成させて、CO_2レーザプラズマ生成後の放電遅れ時間短縮に関する基礎実験を行うことを目的とする。 研究実施内容 (1)実験条件 ガス:窒素、酵素、乾燥空気 電極:棒対平板 (棒直径3mm、平板直径86mm、厚さ30mmSUS製)気圧:1気圧一定 ギャップ長(d_g):30mm一定 レーザプラズマ生成位置:CO_2レーザプラズマ(ギャップ中心位置固定) YAGレーザプラズマ(棒電極中心軸上の中心を含む5分割点) (2)放電誘導しきい値測定 上記実験条件下でV_<50>に相当するしきい値電圧測定を行った。実験結果より、CO_2レーザプラズマ(以下CO_2プラズマと略称)生成より100〜400μs以上の早い時刻にYAGレーザプラズマ(以下YAGプラズマと略称)を生成させると、YAGプラズマ位置が平板電極に近づくにつれてV_<50>は低下し、d_a=4〜26mmの範囲においてはその差は7kVとなった。これは、フレーミングカメラによるフラツシュオーバー直前の写真観測において、放電開始発光が負極である平板電極近傍に認められることから、この領域にYAGプラズマで初期電子を注入することでそのしきい値が下がったものと推定される。これらの傾向は、全てのガスにおいて同様であった。 (3)レーザ誘導放電遅れ時間測定 上記実験実験下で、CO_2レーザ照射時刻を規準として誘導放電遅れ時間の測定を行った。実験結果より、CO_2プラズマおよびYAGプラズマ単独で生成したときの誘導放電遅れ時間よりも、組み合わせプラズマでの遅れ時間が短くなった。また、YAGプラズマ照射位置を平板電極に近づけることにより、乾燥空気ではCO_2プラズマ単独での場合に対して最小で1/10程度に遅れ時間短縮が生じた。また、この時間短縮現象は負極棒対平板についても同様な傾向を示した。以上により、遅れ時間短縮については放電開始領域で初期電子注入を効率的に行うことが重要である。
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