研究概要 |
昨年度は,Al_3Hf 金属化合物の陽極酸化膜について検討したので,本年度は、陽極酸化が可能な弁金属とアルミからなる化学量論的な金属間化合物を陽極酸化膜キャパシタの原材料として用いる事の有用性を検証する目的で、Al_3Hf の場合より高誘電率化が可能と思われるAl_3Zr 陽極酸化膜キャパシタに着目し,そのキャパシタ特性や周波数特性及び漏れ電流特性を酸化膜厚の低減効果と耐熱性との関連から検討した.その結果,以下の結論を得た. (1)化学量論的なAl_3Zr 金属間化合物膜は,Zr面積比13.2%のAl-Zr複合ターゲットを同じスパッタすることで作製できる.(2)Al_3Zr 陽極酸化膜の漏れ電流特性には印加電圧の極性による違いは無く,C値に周波数依存性もほとんど認められない.(3)酸化膜厚を140Å程度まで薄層化しても,極めて小さな漏れ電流を保持でき,且つ400℃程度の温度までは熱劣化は生ぜず,極めて耐熱的である.(4)昨年度のAl_3Hf 場合と比較すると,初期特性としては,静電容量が大きく漏れ電流が小さいと言う意味で,Al_3Zr 陽極酸化膜キャパシタの方が優れているが,耐熱性の面では若干劣る.(5)以上を総合すると,Al_3Hf や Al_3Zr 等の金属間化合物を陽極酸化膜キャパシタの原材料として用いるという着想は,有用な材料設計と言える. 現在は,この考え方の有用性を更に一般的に確証するため,より高誘電率化が可能となるAl_3Ta陽極酸化膜キャパシタに関して,予備的検討に着手している.
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