研究概要 |
フィールド酸化膜であるSiO2上における配線層としてのCuを,エレクトロマイグレーション耐性に優れた(111)面に優先的に配向させるための下地バリヤ層を検討した。バリヤ層の材料として,Cuと固溶度が小さく化合物を作らない材料として遷移金属のNbおよびVを検討した。これらの金属はbcc構造を有し,SiO_2上で稠密面である(110)面の優位配向が認められ,さらにその上のCu層には(111)面の優位配向が認められた。これらCu/Nb or V(100nm)/SiO_2/Si構造の熱処理に伴う拡散・反応を調べたところ,700℃以上の熱処理により,表面へのNbおよひVの偏析とSiO_2界面での酸化・還元反応の進行が見られた。熱処理に伴うこのような拡散・反応は配線層やSiO_2層の信頼性を損ねる要因となりうるのでこれらの低減を図るために,NbやVを窒化物としたNbN,VNバリヤ層の適用を検討した。その結果,これらのバリヤは800℃(NbN)〜850℃(VN)の熱処理においても表面への拡散やSiO_2層との酸化還元反応が抑制された安定なバリヤ層となることが明らかとなったが,Cu層の(111)配向性については,NbおよひV介在層の場合と比べて劣ったものとなった。以上のことより,Cu配線層の配向性と系の熱的安定性の両立とその学問的裏付けについての検討が次年度の課題と思われる。
|