研究概要 |
本研究では,金属薄膜上に作製された有機超薄膜の構造評価を表面プラズモン(SP)励起を利用した光学測定,すなわち全反射減衰(ATR)法および光散乱法などを用いて詳しく行った。有機超薄膜としては,ナノメートルオーダの分子長で制御された膜厚を有する秩序構造を持つLB膜を使用した。 まず,表面プラズモン(SP)励起を利用したより高感度な全反射減衰(ATR)および光散乱測定装置を構成した。そして,ガラス基板上に主としてAg薄膜を真空蒸着し,種々のLB膜を累積し評価した。アラキジン酸LB膜のATR特性や光散乱特性から,膜構造を評価した。特に,散乱光の解析からLB膜表面の凹凸の情報が得られることを明らかにした。また,メロシアニン色素LB膜などにおいては,色素とSPとの相互作用により散乱光が強められていると考えられた。さらに,スピロピランやアゾベンゼンなどの光異性化LB膜については,光異性化に伴うATR特性や光散乱特性等の変化を調べ,光異性化に伴う可逆的な変化を観測した。そして,光学特性や光機能について検討した。次に,ATR法とは逆に,空気側から光を入射し,プリズム側に観測される放射光の測定についても検討した。メロシアニン色素LB膜についての結果から,観測された放射光の角度分布や強度は,LB膜の光学特性が強く影響していると考えられた。さらに,メロシアニン色素LB膜を用いた光電変換素子も作製し,SP励起により短絡光電流の増大することを明らかにした。 以上の結果より,金属薄膜と有機超薄膜の界面に励起されたSPを利用した測定法により,膜構造の高精度な評価が可能であることを明らかにした。また,SP励起を利用することにより,SPと色素分子との相互作用なども期待され,種々の応用が可能と考えられる。
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