小型軽量で効率的な表面電離型の正イオン源を開発するために、初年度は理論的・基礎的な問題点の究明に努めた。即ち、(1)テスト用の小型イオン源を設計・試作すると共に、(2)このイオン源内に取付けた耐熱金属細線(イリジウムやレニウムなど)の表面に、試料(NaCl、KCl、NaBrなど)をビームの形で入射させて、生成放射される正イオン(Na^+やK^+など)の量を、表面温度や残留ガス圧(真空度)などの関数として、測定した。(3)得られた実験データを、本人の創案した理論式に代入して、正イオンの放射に有効な仕事関数を決定した。これらを吟味検討したところ、次の結論が得られた。(1)仕事関数は、残留ガス(特に酸素)の吸着により増大し、試料の吸着で減少する。(2)中間の温度領域(一般に1100-1300K程度)では、仕事関数が大きな値に保持されるため、イオン化効率が最大となる。(3)この領域を広く維持するためには、残留ガス圧を1μTorrの近辺に保持する方が良い。(4)この領域は、表面と試料の両性質によって決まり、簡単な1次式で表わされる。また、試料塗布方式による正イオン放射については、実験と解析とを行なった。 以上の研究成果は、国際会議などで発表すると共に、国際的な学術雑誌上に公表ずみ、あるいは、現在印刷中である(次頁参照)。
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