研究概要 |
小型軽量で効率的な表面電離型の正イオン源(試料入射方式と試料塗布方式)を開発するために、昨年度は理論的・基礎的な問題点の究明に努めた。その成果を踏まえて、本年度は、実験測定とデータの解析に全力を注いだ。その結果、次の結論がえられた。[I]試料入射方式.(1)各種の耐熱金属(Nb,Mo,Ta,W,Re,Ir,Pt)のうち、イオン化用の表面材料としては、Reが最適である。(2)最適な表面温度は一般に約1100〜1300Kで、残留ガス(特に酸素)の吸着によって仕事関数が6〜7eVにまで増大するため、イオン化効率に最大(100%)となり易い。(3)真空度としては、1uTorrが望ましい。(4)以上の条件下では、試料原子のイオン化エネルギーが約6.5eV以下の元素(約30種類)に対して、約100%のイオン化が達成できる。また、(5)0.1mA/cm^2の電流密度は容易に得られる。 [II]試料塗布式.(1)アルカリハライド(MX)などのイオン結晶層(θ【similar or equal】0.1〜10^3分子層)を、融点以上に加熱すると、M^+の放射が顕著になる。(2)M^+は薄い試料層(θ<10分子層)上、または基質金属(白金)板上の活性点から放射される。(3)活性点の仕事関数は、7.8〜5.8eVである。(4)イオン化効率は、融点以上で一般に10^<-3>〜10^<-4>の程度であり、θ<1分子層では、10^<-2>も可能である。(5)従って、MXなどの塩類を水溶液の形で、極微量(10^<-11>モル程度)を白金板(約0.03cm^2)上に塗布後、その試料管(θ【similar or equal】0.1〜1分子層)を融点付近まで加熱すれば、10^<-9>〜10^<-11>Aの正イオン電流がえられ、極微試料の定性・定量分析も容易である。
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