研究概要 |
試料入射方式及び試料塗布方式の2種類の表面電離型正イオン源を設計試作改良後、各種実験条件の下で正イオンの生成効率を測定し、さらに、その支配因子なども追及して、最適な作動条件の究明に努めた。その結果、次の結論が得られた。 (A)試料入射方式(1)イオン化表面の最適温度領域(T_1-T_2)では、残留ガス(特に酸素)の吸着によって、仕事関数が最大φ^^〜__-6-7eV)となり、従ってイオン化効率が最大(B^+=100%)となり、易い。(2)この領域の下限温度(T_1)は3因子、上限(T_2)は2因子によって、支配される。(3)表面温度としては、この領域内(約1100-1300K)を選定し、残留ガス圧は1μTorrの程度が望ましい。(4)各種耐熱性金属(Re,W,Ta,Nb,Ir,Ptなど)のうち、イオン化表面材料としてはReが最適である。(5)これらの条件化では、試料原子のイオン化エネルギーが約6.5eV以下の元素(約30種類)に対して、B_+=100%が達成できる。(6)イオン電流の出力は、J^+=eNβ^+Sで与えられ、分子線の入射速度がN=1×10^<14>分子/cm^2Sで、イオン化面積がS=0.005cm^2のとき、β^+=100%の領域では、I^+=0.1μAとなる。(7)従って、基礎的な研究用(イオン-分子反応やイオン-界面現象の追及など)や無機塩類などの極微量質量分析計用の簡便なイオン源として、十分に活用できるものである。 (B)試料塗布方式(1)アルカリハライド(MX)などのイオン結晶層(θ^^〜__-0.1〜10^3分子電)を定速または段階的に順次昇温加熱して行くと、融点以下では主に中性の蒸発がおこり、正イオン(M^+)の放射は起こりにくい。(2)融点以上では試料が一般に10分子層以下に減少し、M^+の放射が顕著になる。(3)M^+は薄い試料層(θ<10分子層)上または基質金属(白金)板上の活性点から放射される。(4)例えばアルカリフッ化物/百金表面系の場合、活性点の仕事関数(φ^+)は、7.8〜5.8eVとなる。(5)イオン化効率(β^+)は、θの減少と共に一般に高くなり、試料の融点以上(従って試料層は薄くなっており一般に10分子層以下)では、β^+^^〜__-10^<-3>〜10^<-4>となる。(6)しかし、塗布量が薄く、θ<1分子層の場合は、β^+^^〜__-10^<-2>も可能である。(7)従って、MXなどの塩類を水溶液の形で極微量(10^<-11>モル程度)を白金板(約0.03cm^2)上に塗布後、その試料層(θ^^〜__-0.1〜1分子層)を融点付近まで加熱すれば、10^<-9>〜10^<-11>Aの正イオン電流が得られ、極微試料の定性・定量分析が容易である。 以上の成果は、国際会議などで発表すると共に、国際学術雑誌上でも公表ずみ、又は、印刷中である。
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