研究概要 |
本研究では,VHFプラズマ(周波数60MHz)を用いたスパッタリング法による水素化アモルファス炭素(a-C:H)の作製に関して,成膜条件と膜構造の関係について詳細に検討した.また,水素プラズマ処理による薄膜の構造変化についても調べた. スパッタガスとしてヘリウムと水素の混合ガスを用いた系において,a-C:H薄膜の堆積速度および膜中の結合水素濃度は,成膜時の水素分圧に強く依存することが明らかになった. また,成膜時に基板に交流バイアス電圧を印加し,基板へ到達するイオンのエネルギーを制御した場合,バイアス電圧の増加とともに薄膜の構造が変化し,堆積速度および膜中の結合水素濃度の水素分圧依存性がバイアス電圧を印加しない場合と比較して,低い水素分圧側へ移行することがわかった. 赤外吸収分析の結果から,膜中に取り込まれる水素の結合様式は水素分圧によって変化し,適当な水素分圧において作製されたa-C:H薄膜は,sp^2C-H結合がほとんど見られず,薄膜のsp^2結合炭素の減少を伺わせる結果が得られた.さらに,膜中の結合水素濃度が高くなると,光学ギャップが高くなるとともに,屈折率が減少することが示され,水素分圧等の成膜パラメータを変化させることによりa-C:H薄膜の光学特性を制御できる可能性があることが明らかになった. 作製したa-C:H薄膜をプラズマ処理した結果,成膜条件の異なる薄膜において,プラズマ処理後の薄膜の膜中結合水素濃度,結合様式等の膜構造の変化に違いが見られ,この違いが成膜時の膜構造に依存していることが明らかになった.さらに,プラズマ処理では,薄膜の光学ギャップは大きく変化しないことが示され,この結果から薄膜の光学ギャップを決める要因についての知見が得られた.
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