平成10年度の研究成果を実施項目1、2に分けて示す。 1 パルス静電応力(PEA)法による空間電荷測定の装置製作について この装置は、測定器本体、デジタルオシロスコープ(HP-5482OA)、パルスジェネレータ(パルス幅5ns、周波数400Hz)、コンピュータ(FMV-5200T4)から構成され、測定器本体中に、厚さ10μmのLiNbO_3センサーと40dBの増幅器をセットした。この装置の測定位置分解能は10μmであり、また試料と電極の密着度を向上させるため、上部電極には半導電層材料を用いた。本装置の動作確認をすでに終了し、現在実際の試料を用いて一部実験を行っている。 2 熱刺激電流(TSC)に及ぼす電子線照射効果と物性評価について 日本原子力研究所高崎研究所の2号電子加速器を使用し、PEEKへの電子線照射を空気中で行った。線量は、50、75MGyおよび100MGyとし、照射後バイアス温度(T_b)を100、140℃および180℃、バイアス時間を1hr、そしてバイアス電圧を1.0kVと設定し、昇温速度を1℃/minとしてTSCを測定した。初めに、電界10kV/mmを3hrs印加後、電界を零にしてPEA法により未照射PEEKの空間電荷分布を測定した結果、この条件では空間電荷がほとんど現れないことが明らかになった。次に、TSCを測定した結果、それぞれのT_bあてTSCスペクトルが現れ、そのピーク温度は線量が多いほど高温側へ移行し、そのピーク値は未照射より50MGyの方が大きく、線量が50MGyより大きくなるとピーク値は小さくなった。XPS装置を用いて光電子スペクトルを測定し、それらのケミカルシフトを解析した結果、線量が多いほどC-0およびC=0の強度は増加し、C-Cの強度は減少することがわかった。これらの結合基について試料表面から厚さ方向へ分析した結果、上述した傾向は厚さを変化させても変わらなかった。また、それぞれの強度はいずれの試科も表面に近づくにつれて多少増加する傾向になった。
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