新高分子材料の電子線照射効果と電気伝導機構

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10650317
• 研究機関: 八戸工業大学
• 研究代表者: 藤田 成隆 八戸工業大学, 工学部, 教授 (80105543)
• 研究分担者: 類家 光雄 八戸工業高等専門学校, 教授 (10042128)
• キーワード: 耐熱性高分子材料 / 電子線照射効果 / 電気伝導 / 空間電荷 / 熱刺激電流

研究概要

平成11年度の研究成果を実施項目1、2に分けて示す。
1伝導電流と空間電荷挙動の関係
昨年度完成させたPEA装置を用いて、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)とポリイミド(PI)へ電子線を照射した後の空間電荷密度を測定した。線量として、25、50、75MGyおよび100MGyの4種類を用いた。照射後の空間電荷密度は、試料の種類および線量にかかわらず観測されなかった。次に、PEEKとPIの伝導電流の温度特性について検討した。印加電界を0.2MV/cm一定にし、測定温度はPEEKの場合260℃まで、PIの場合500℃までとした。PEEKの場合、照射試料の伝導電流は200〜210℃の間で小さなピークを示し、PEA法では測定できない密度の空間電荷が形成された。また、この試料について再度温度特性を測定した結果、ピークは消失した。一方、PIの場合、照射試料の伝導電流は250℃付近から急増するが、空間電荷の形成は認められなかった。
2構造変化と空間電荷の相関
ポーリング電圧(V_p)を0.5、1.0、1.5kV、ポーリング温度(T_p)を100、140、180℃に変化させた時の照射PEEKの熱刺激電流(TSC)特性について検討した。TSCのピーク温度は線量が増加するにつれて高温側へ移行するが、V_pによって変化せず一定となった。分極電荷量(Q_<TBC>)は、T_pが180℃の場合を除いて線量とともに増加し、またQ_<TSC>はV_pの増加とともに大きくなった。さらに、構造変化と直流バイアス電圧(V_b)印加による空間電荷形成との関係をPEA法により調べた。V_bを印可することによって、電極から電荷が注入されてホモ空間電荷が形成されるが、線量の増加とともに空間電荷が形成されにくくなった。また、PIに比較してPEEK中の空間電荷が消滅し易いことも明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] S.Fujita: "ELECTRICAL PROPERTIES AND SPACE CHARGE DISTRIBUTION OF ELECTRON BEAM IRRADIATED PEEK"Abstracts on International Seminar on Polarization and Space Charge Phenomena in Polymer Dielectrics. 11 (1999)
• [文献書誌] Y.Kamei: "Space Charge in Polyimide Film Exposed to High-Dose Electron Beam"Proceedings of IEEE 10th International Symposium on Electrets. 67-70 (1999)
• [文献書誌] S.Fujita: "Dielectric Properties of Electron Beam Irradiated PEEK"Proceedings of IEEE 10th International Symposium on Electrets. 115-118 (1999)
• [文献書誌] S.Fujita: "ELECTRICAL PROPERTIES OF POLYIMIDE"Proceedings of SPIE(The International Society for Optical Engineering. 4017. 101-105 (1999)
• [文献書誌] Y.Kamei: "Measurement of Space Charge in Polymer Dielectric Films by PEA Method"The Bulletin of Hachinohe Institute of Technology. 19・19. 69-76 (2000)
• [文献書誌] K.Shinyama: "Influence of Electron Beam Irradiation on Dielectric Relaxation Phenomena of Insulating Polymer"Proceedings of International Symposium on Prospects for Application of Radiation Towards the 21st Century. 147-148 (2000)