研究概要 |
試料として、25,50,75MGyおよび100MGy照射したポリエーテルエーテルケトン(PEEK)とポリイミド(PI)を用いた。伝導電流は印加電界を0.2MV/cm一定にし、PEEKの場合260℃まで、PIの場合500℃まで測定した。PEEKの場合、照射試料の伝導電流は200〜210℃の間で小さなピークを示し、PEA法では測定できない密度の空間電荷が形成された。さらに、照射による架橋効果によって伝導電流は小さくなり、ホッピング距離も短くなった。一方、PIの場合、照射試料の伝導電流は250℃付近から急増するが、空間電荷の形成は認められなかった。次に、ポーリング電圧(V_p)を、0.5、1.0、1.5kV、ポーリング温度(T_p)を100、140、180℃に変化させたときの照射PEEKの熱刺激電流(TSC)のピーク温度は、線量が増加するにつれて高温側へ移行するが、V_pによって変化せず一定となった。活性化エネルギーは、照射線量が多くなるにつれて小さくなった。また分極電荷量(Q_<TSC>)は、T_pが180℃の場合50MGy照射試料が最大となり、それより線量が多くなると徐々に減少した。XPS装置を用いて結合エネルギーを測定し、それらのケミカルシフトを解析した結果、線量が多いほど、C-OおよびC=Oの強度は増加し、C-Cの強度は減少した。これらの結果から、照射によって架橋が起こる一方、崩壊反応も同時に起こり、双極子量が増加することを明らかにした。さらに、構造変化と直流バイアス電圧(V_b)印加による空間電荷形成との関係をPEA法により調べた。V_bを印加することによって、電極から電荷が注入されてホモ空間電荷が形成されるが、線量の増加とともに空間電荷が形成されにくくなった。また、PIに比較してPEEK中の空間電荷が消滅しやすいことも明らかになった。
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