研究概要 |
最近開発された超磁歪合金は化合物特有の脆さがあり、アクチュエータへの応用には限界がある。そこで、低磁歪かつ高強度の磁性合金と組み合せ、粉末冶金的手段により「傾斜機能型の磁歪材料」とすれば、反り変形が可能で、実用的な複合磁歪合金が期待できる。 本着想にもとづく一連の複合磁歪合金に関する研究結果として 1.超磁歪合金の製造実験:Tb,Dy,Feの各元素粉末にメカニカルアロイング(MA)を適用し、無酸素雰囲気中で機械的に合金化させ、これをパルス通電焼結(SPS)で加圧・焼結する新しい方法により、(Tb,Dy)Fe系の超磁歪合金を製造可能とした。 2.簡易型磁歪測定装置の設計・製作:独自の光学梃子式磁歪測定計を設計・製作し、試料空間(φ52mm)に110kA/mまでの磁界を発生させ、光源にレーザー光を使用し、磁歪による直線変位のほか歪曲変位、つまり反り挙動も10^<-4>radオーダーで測定、解析可能とした。 3.超磁歪合金の測定・評価:代表的な超磁歪合金の(TbxDy_1-x)Feyを中心に組成を変化させ、前記手段により単層焼結体を作製し、磁歪λ-磁界曲線や磁歪率(λ/ΔH)の形で性能評価し、粉末性状やSPS圧力/焼結条件などの最適化を行った。 4.超磁歪合金の複合化実験:超磁歪/低磁歪複合体に対し、磁界に直交方向に反りが発生することを確認し、さらにSPS圧力/焼結温度のほか、粉末充填法や層厚さ(比)などの緒条件と焼結性、界面の相組織や組成の傾斜化などの関係を明らかにした。 5.複合磁歪合金の測定・評価:超磁歪/ゼロ磁歪(Fe-6.5Si)複合体の反りΔθは磁界に対して直線的に変化し、磁歪率(Δθ/ΔH=)1.1×10^<-4>rad/kAm^<-1>が得られ、これより低Si側では磁歪率は同等で靱性がよく、高Si側では磁歪率や比抵抗は増大するが脆化傾向が見られた。 以上、本傾斜機能型の磁歪材料は未知要因も多く、再現性にも問題は残るが、反り方式による非接触の磁界作動型アクチュエータ(センサ)として使用可能と判断される。
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