平成10年度研究項目 薄いソフト磁性層によってFeCoV 薄膜に誘導される磁気異方性の探索 最強磁化を有するFe-CO系磁性薄膜のソフト磁性化を実験的に検討した。現在までの結果の要約を以下に示す。 (1)微量ソフト磁性層(体積率で約2%)との三層膜化によって、飽和磁化を殆ど減少させることなく、FeCoV薄膜の保磁力が約1/10以下に減少する。(2)ソフト磁性層は微量であるにもかかわらず、約100倍の体積を有するFeCoV膜の磁化特性を支配する可能性がある。(3)保磁力の減少効果は、基板に蒸着されたソフト磁性層の磁化特性の異方性に関連するように思われる。(4)磁化過程では、ソフト層とFeCoV層の両層が独立に振る舞うことなく、あたかも単層膜であるかのようなシンプルな磁化反転を示す。(5)微量ソフト層とFeCoV層との界面に形成された膜面に平行な磁壁が、FeCoV層に容易にかつ連続的に伝搬することが予想される。(6)磁壁形成に必要なソフト層の厚みが約〜50-100Åであろうと推定される。(7)一方、Fe膜の場合は、微量ソフト層による保磁力減少効果は全く生じない。(8)微量ソフト層のFeCoV膜の磁化過程に及ぼす本質的要因、例えば、FeCoV膜の優先的結晶成長に及ぼす下地ソフト層の影響等の検討が必要であろう。 上述した顕著な保磁力減少効果の機構をさらに探索する。特に、保磁力減少効果の磁性層結晶構造との関係及び周囲温度依存性に関して探索する予定である。
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