平成10年度は、原子間力顕微鏡(AFM)の微細探針を用いて、200〜600nmクラスの微小レジストパターンの剥離挙動を解析した。固体基板上から選択したパターンのみを剥離することが基本的に可能になった。これまでに得られた知見を以下に示す。 1. レジストパターンの接着力は極めて弱く、AFM探針が接触しただけで倒壊する。よって、カンチレバーのばね定数として、かなり低いものを選択する必要がある。 2. 探針走査によるパターン倒壊法により、レジストパターン接着力の熱処理温度依存性を明確に解析することが可能である。この結果は、従来の接着力試験法であるマクロなサイズでの引っ張り試験法による結果と同様な傾向を示していた。しかし、検出感度としては、2桁程度の改善が確認された。 3. 今回の手法は、固体基板上に形成されたレジストパターンを局所的に破壊倒壊させるために、基板上に残さを形成しない。これにより、レジストパターンと基板との界面特性を純粋に検出していることが分かった。一方、従来のマクロな引っ張り試験法では、接着面積が大きいために多くの残さが生じている。これは、フォトレジストの凝集破壊と界面剥離とが混合して生じたことを示している。これらの理由から、検出感度の差が生じたものと考えられる。 平成11年度は、AFM探針をレジストパターン上を走査する際に生じる摩擦力の定量解析を試みる。摩擦力の解析は、カンチレバーの捻れ方向の変位量を同時に測定することで可能になると考えられる。また、対象とするレジストパターンの線幅を、100〜150nmにまで縮小する。 以上の結果より、200nmクラスの線幅のレジストパターンの倒壊現象の基礎解析は確立できたと判断している。また、精度向上に対して多くの問題点も明確になってきたため、今後、さらに研究開発を行う。これまでの研究において得られた成果を、国際学会に2件公表した。
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