本研究は、マイクロマシン技術によりSi基板に形成したエアブリッジ型マイクロヒータとその中に形成する試料ホルダーと温度センサとを一体形成して熱分析用のセンシング本体部を作成し、その独自の昇温方法と制御系の検討、熱方程式と実験的データとの比較等から得られる各種物理量の導出方法の検討、カロリーメトリックな測定法のための検討、極低温から高温までの計測可能な熱分析計の開発、無機および有機材料の実際の熱分析的評価・検討、磁性材料に対する評価・検討、更に、各種試料の初期熱的変化から初期質量の同定、試料質量変化の熱計測など、理論的に検討し、ハンデイな超小型熱分析計の作製とその独自の熱分析方法に関する基礎を確立するとともに、搭載するトランジスタサーミスタのB定数可変回路を確率することを目的としたものである。研究結果として、(1)マイクロヒータの寸法と形状、試料ホルダーの寸法と形状、熱電対の構成要素の種類とエッチング工程の評価を行い、飼料の温度センサとしての熱電対は、金とニッケルとの組合わせが、純金属から構成されるので再現性が良いことを確認した。(2)センシング部に適合する温度走査の制御系の製作と実験的評価として、定側電力走査方式を採用して、パソコン制御した。(3)センシング部の温度走査における時間微分法の確率と評価として、参照試料を必要としない新しい加熱速度曲線を得る方式を確立した。(4)水試料の初期質量の評価法の確立、エンタルピーの算出等を行った。(5)基板の絶対温度を常時計測するために、バイポーラ型およびMOSFET型のトランジスタ・サーミスタを提案し、理論的検討を行い、さらに集積化することを検討し、実証した。(6)低温から高温まで試料ホルダーを温度制御するための周囲または部分的冷却法の検討し、ペルチェー素子と組合わせた温度制御システムを作成し、ほぼ良好な結果が得られた。(7)30秒程度の短時間に各種試料の熱分析計の設計指針がはっきりし、磁性材料の評価は時間的に余裕がなく、まだであったが、ほぼ目標の基礎的研究は達成された。
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