研究概要 |
1.垂直記録(単層媒体系)の記録再生過程解析解法: (1)単層媒体系のリングヘッドによる記録過程の解析法を開発し,媒体の記録磁化転位幅(記録の分解能)が媒体/ヘッド系の主要パラメータの具体的関数として定式化された. (2)この結果に前年度までに開発した再生過程の解析法を組み合わせることにより,記録過程→再生過程を通した記録再生特性の解析解法が構築された. 2.媒体ノイズ理論: (1)垂直単層媒体のノイズのモデル化,各ノイズ減に対する(G)MRヘッドで再生(検出)した場合のノイズスペクトルの定式化を前年度に引き続き行い,磁気クラスターの種類及び大きさ,クラスターの磁化の大きさと向きなどのそれぞれの平均値及び分散とノイズスペクトルの関係を定量的に明らかにした.この手法で求めた磁気クラスターはMFM(磁気力顕微鏡)による解析結果と良く一致した. (2)MFMによる媒体の微視的磁化状態の実験的解析法を検討し,従来あいまいであった同手法を定量化した.また直流磁化後数時間経過しただけでCoCr系薄膜媒体のMFM像は大きく変化し磁気クラスターの熱搖らぎ現象があることを見出した.この磁化の熱揺らぎ現象の観測法は記録の限界に係わる問題の評価法として重要である. 3.媒体の材料設計: 2項,3項の結果から,逆磁区の発生による媒体ノイズの増大,記録磁化の熱擾乱による経時減磁を阻止する為には従来から提案されている微粒型CoCr系薄膜媒体よりもより大きな異方性磁界H_kを有する媒体が超高密度記録(200Gb/inch^2領域)では必要であることが明らかになった. 我々は研究分担者(逢坂)がすでに提案している原子界面設計の概念を発展させ,アモルファスカーボン下地層の上にCo/Pd人工格子膜を形成した複合垂直磁化膜が非常に大きなH_k(≒20kOe)を持ちながら同時に磁化反転機構が従来のCoCr系薄膜と同様な磁化回転型となり,記録の高分解能と低ノイズ特性を示す事を見出した. これはこのような新概念のナノ構造人工格子膜媒体の磁化機構・記録機構の解明という磁性物理・磁性材料工学の観点から新しい領域の研究への発展を意味し,磁化機構・記録機構の解明を記録再生系設計手法の構築に発展させたい.
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