化学分析用ガラス部品(コック類、小型フラスコ、分りゅう管等)を組み合わせてガス供給システムを構築し、レコーダーを用いてガス検知の応答特性を、インピーダンスアナライザ(今年度購入)を用いて直流・交流導電率の測定ができるようになった。ガスセンサは、くし型白金電極を設けたアルミナ基板上に金属酸化物微粉末を焼結(400-600℃、10〜120min)して作製した。センサはステンレスパイプ先端に取り付けられ、分りゅう管内部に挿入される。分りゅう管にはリボンヒーターが巻かれ、センサの温度を変化(<330℃)できる。センサは常に乾燥空気流(1l/min)中に置かれ、測定ガス含有の有無で検知特性を測定できる。 酸化すず(SnO_2)焼結膜を用いてエタノールについて実験を行い、次の結果を得た。 (1) 乾燥空気中でのセンサの電気抵抗値は、室温から温度を上昇した時、200℃位までは通常の半導体と同じく抵抗値は減少するが、更に温度を上げると抵抗値は再び上昇する。この現象は半導体的キャリヤ密度の変化と表面への酸素吸着による表面空乏層の成長との競合によって起こると思われる。吸着型ガスセンサの検知機構は、neck-controlあるいはboundry-controlのいずれかに依ると言われているが、実際のセンサがそのどちらの機構で動作しているかに注目することはこれまで殆どなかった。実験で見られ抵抗値の温度特性は、低温域のneck-controlから高温域のboundary-controlへの移り変わりによって発生している。boundary-control機構の場合には粒界に存在する電位障壁が容量成分を有しているので検知ガスの有無によって交流導電率が敏感に変化する可能性を持っており、検知感度の向上が期待できる。 (2) 検知ガスの供給を遮断した後の信号減衰時定数は、センサの温度に対して複雑な変化を示す。室温から温度を上昇すると時定数は減少するが、200℃位から反って増大傾向に転じ、25〜280℃で最大に達した後、再び減少する。このような複雑な温度特性は、多孔質焼結膜中に残っている検知ガスの酸化反応、乾燥空気中の酸素の吸着反応、残留ガスの離脱といった種々の過程の複雑な競合の存在を示唆している。
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