(1)SnO_2センサにエタノール蒸気・空気混合ガスを一定時間流した時の応答特性を調べ、立ち上がり時間は200℃を越えると急激に減少するが、立ち下がり時間は200℃近傍から増加し始め250〜300℃で最大となった後、再び減少するという複雑な挙動を示した。立ち上がり、立ち下がりとも応答特性の良い状態で動作するには330℃以上に加熱する必要がある。 (2)典型的なN形およびP形酸化物半導体であるSnO_2およびCu_2Oでは、200℃以上の温度域でエタノール蒸気との反応によって電気抵抗変化が逆になっていることが明瞭に認められた。これより酸化物半導体センサでは表面にあらかじめ吸着している酸素原子による酸化・還元反応が電気抵抗変化の主要因であることが改めて確認された。 (3)N型酸化物半導体SnO_2電気抵抗は空気中200℃以上の温度域で正の温度係数を示す。この状態でエタノール蒸気と反応させると電気抵抗は減少し、負の温度係数を持つようになるが、空気雰囲気に戻すと特性は元に戻る。このことは、正の温度係数が酸素の表面吸着現象と密接に関係していることを示している。 (4)SnO_2、SnO_2-ZnO(1〜10at%)、ZnO、Cu_2O、Cu_2O-NiO(1〜10at%)、NiO、Sb_2O_3、Fe_2O_3、Ta_2O_5、Cr_2O_3、WO_3の市販の粉末を用いて計15種のセンサ素子を作製した。乾燥空気中での電気抵抗の温度依存性から求めた活性化エネルギーはいずれも0.2〜0.7eVの範囲にあり、外因性半導体であることがわかった。次に、これらのセンサの300℃における5種の匂いガス(エタノール、α-ピネン、2-ヘプタノン、安息香酸エチル、蟻酸エチル)に対する反応を調べ、検知感度がそれぞれ異なることを確認した後、6種のセンサ素子を選んで複合センサを構成した時の感度パターンをレーダーチャートに表示した。その結果、上記5種の匂いガスに対する感度パターンに明瞭な違いがあることが明らかになった。このことより特性の異なる酸化物半導体センサを数種組み合わせた複合センサによって匂いガスの識別が可能な匂い検知装置を構築できることが実験的に確認された。酸化物半導体の混合体、表面への触媒金属の担持などの手法により、検出すべき匂い、あるいは識別すべき匂いに応じて最適の複合センサを作ることが可能である。
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