誤り訂正符号は、雑音のある通信路における通信の信頼性の向上を目的とした符号であり、各種ディジタル通信システムにとって、高品質な通信を行う際に必要不可欠な技術となっている。この誤り訂正符号に関連する情報理論の最も著しい成果として、1977年にCsiszar、KornerおよびMartonは、通信路特性を予め知ることなく符号化・復号化が行なえ、かつ符号長を長くしたときの復号誤り率が、その通信路における最適な符号と同程度であるような「ユニバーサル(万能)符号」が無記憶通信路に対して存在することを示した。しかしながら、ユニバーサル符号の実際の応用分野である無線通信システムや移動体通信システムにおける通信路は一般に記憶を有するため、彼らの成果を直接応用することはできなかった。本研究では、バースト誤りや符号間干渉を取り扱うことのできる記憶を有する通信路のモデルとして、有限状態通信路を取り上げ、有限状態通信路に対してユニバーサル符号の具体的な構成法を考案すると共に、実用的な計算量での符号化・復号化アルゴリズムを開発することを目的とし、本年度の成果として、有限状態通信路に依存せずに符号化および復号化が行えるユニバーサル符号の存在の証明に成功した。また、その存在が保証されたユニバーサル符号は、最ゆう復号法と指数的に同程度の誤り率を有することを明らかにした。
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