本年度は実用的観点より簡単な2レベルの重要性を有するモデルを採用し、以下に示す符号を構成した。 1. 重要部分を1個の固定バイトとみなし、そこに生じた全ての誤りを訂正する符号を3種構成した。この符号は重要部分と他の部分に異なる誤り制御機能を割り当てた符号であり、UEC符号と呼ぶ。本符号の理論的限界、復号法、復号回路量を求めて、得られた符号が理論的、実用的に優れた符号であることを確認し、得られた成果を論文にまとめてIEEE(電気電子学会)の論文誌IEEE Transactions on Computersに投稿した。本論文は同誌の1998年12月号に掲載された。 2. 符号語が複数のバイトから構成されているメモリシステムへの応用を考慮して、複数バイトからなる重要部分に生じた1バイト誤りを訂正しする符号を2種構成した。本符号は他に生じた1バイト誤りが重要部分を誤訂正しないことを保証することによって重要部分を上記のUEC符号よりも強く保護している符号であり、UEP符号と呼ぶ。 3. バースト誤りを考慮したUEP符号として、重要部に生じたバースト誤りを訂正し、他に生じた1ビット誤りを訂正する符号を構成した。また、重要部部分のバースト誤り検出能力を他におけるバースト誤り検出能力よりも高めた1ビット誤り訂正符号も構成した。後者の符号は平成11年3月に開催される電子情報通信学会総合大会にて発表する予定である。 本年度の後半にワークステーションを購入して、得られた符号の能力確認および機能を越えた誤りに対する誤り制御能力の評価を行なうシミュレーションソフトウェアを開発した。来年度はこのソフトウェアを用いてシミュレーションを行ない、符号の実用に必要なデータを採取する予定である。
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