研究概要 |
本研究では、マルチメディア伝送用のピコセル(半径数10m)超高速(25〜50Mビット/秒)デジタル無線通信方式の提案を最終目的としている。符号化変調及び最尤系列推定の理論を適用し、従来にはない超高速準移動体用無線変復調システムの開発(理論解析およびシミュレーション実験)を行うものである。 平成10年度〜12年度の3年間を1)理論の構築、2)実験、3)検証と最適化、に分けて、各年度毎に目標を立てている。基本的な方式としては、過去に研究実績があり良好な特性が期待できる位相連続FSKのエネルギー検波系列推定方式及びリミッター・ディスクリミネータ検波系列推定方式を用いることとした。これらの非同期検波方式をベースに、送信側のさらなる相関符号化やアンテナダイバーシティーなどを併用して、最終的なシステム構成を提案しようとするものである。最大系列推定利得(dB)やビット誤り率などを理論及び計算機シミュレーションにより確認し、新方式の提案を行うことを目的とする。 平成10年度:マルチパス伝送路における超高速ディジタル無線変復調方式の理論の構築 超高速(25〜50Mbit/sec)ビット速度準移動体用無線データ伝送にとって克服すべき最大ポイントである遅延波の重畳による符号間干渉を効率よく補償するための理論を構築する。すなわち、マルチパス伝送路による符号間干渉を補償し受信系列間の距離特性を確保する。系列間最大距離特性(系列推定利得)に関し、理論解析および計算機シミュレーションを行った。このためには64ビットウィンドウズNT及びLinux対応高速ワークステーションシステム(ビジュアルテクノロジー(株)社製)が必要であり主要設備備品として購入した。具体的な変調方式としては、簡易な非同期検波方式で高速変復調が可能な、2値CPFSKリミッタ・ディスクリミネータ検波系列推定方式、及び2値CP-FSKエネルギー検波系列推定方式を考えた。無線伝送路のマルチパスモデルとして、2波固定及びライスフェージングモデルを考え、トレーニング系列によるチャネルのインパルス応答の同定方法や非線形復調方式であるリミッタ・ディスクリミネータ検波及びエネルギー検波方式に付随する効果など、理論的検討及び計算機シミュレーションを行い、ピコセルマルチメディア情報伝送用超高速ディジタル変調方式の理論の構築及び基本シミュレーション実験を行った。これらの結果は、主として2編のIEEE国際会議論文、ISITA'98(Mexico city,Mexico)及びICC'99(Vancouver,Canada)に報告されている。
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