研究概要 |
効率的な量子誤り訂正符号の構成法を構築するという本研究の目的に向けて,平成10年度は 1. 量子誤り訂正符号関係の文献調査をさらに推進し,量子誤り訂正符号を設計する際に必要な条件を従来の符号理論の立場から理論的に解釈し,効率的な符号を設計するための条件の新しい表現を与える. 2. 量子誤りに対するさまざまな数学モデル(例えば,従来のランダム誤りモデルやバースト誤りモデルに対応するようなモデル)を確立し,これらのモデルと従来の符号理論における数学的な理論体系を基にして,量子誤り訂正符号の構成法について基礎的な考察を行う. 3. 2.におけるさまざまな数学モデルに対して,理論的に構成可能な量子誤り訂正符号のクラスを明確にする.という研究計画に基づいてまず準備的な研究を進める予定であった.しかしながら,上記の1.の段階を進めているときに,新しい論文A.R.Calderbank et al.,“Quantum Error Correction Via Codes Over GF(4),"IEEE Trans.Inform.Theory,vol.44,no.4,pp.1369-1387,July 1998が発表された.この論文では,量子誤りを訂正するためにはガロア体GF(4)上の自己双対符号の利用が有効であることが示唆されていた.そこで,本年度は,当初予定した上記の研究計画を進めていく一環として,本研究の目的に極めて密接に関係しているこの論文の結果について詳細な検討を行った.その結果,この論文では確かに量子誤り訂正符号を構成する際の一つの方向を与えてはいるが,得られる符号のクラスとしてはかなり限定されたものであるという結論に至った.現在,これらの検討結果を踏まえて,効率的な量子誤り訂正符号の新たな構成法について考案中である.
|