研究概要 |
量子コンピュータや量子通信を実現するために克服すべき様々な課題の中で,量子情報の信頼性をいかに確保できるかということは重要な問題であり,そのための有力な手法として量子誤り訂正符号の適用が注目されている.本研究の目的は効率的な量子誤り訂正符号の構成法を理論的に構築することであるが,平成10年度ならびに平成11年度に行った結果を基に,本年度は以下のような検討を行った.すなわち, 1.量子誤り訂正符号はある条件を満足する一組の基底によって完全に記述できるので,従来の古典的な誤り訂正符号に基づいて構成される量子誤り訂正符号の基底を効率的に探索できるアルゴリズムを提案した. 2.上記の基底探索アルゴリズムを用いて実際に計算機により量子誤り訂正符号の基底探索を行い,古典的な誤り訂正符号に基づいて構成し得る量子誤り訂正符号のパラメータを求めた. 具体的には,以下の通りである.CSS符号タイプの量子誤り訂正符号について詳細な検討を行った.そして,量子ランダム誤りや量子バースト誤りなどを含む様々な種類の量子誤りを対象として,個々の量子誤りに柔軟に対処し得るような効率の良い量子誤り訂正符号を構成することを目指した.そのために,量子誤りの任意の集合を対象として取り扱うことができるVatanらによるCSS符号構成法の拡張バージョンに着目して細部にわたって検討した.その結果,効率の良い量子誤り訂正符号を探索するのに極めて有効である基底探索アルゴリズムを提案することができた.さらに,提案したアルゴリズムを実際に利用して計算機探索を行った結果として,いくつかの量子バースト誤り訂正符号のパラメータを明らかにすることができた.
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