無線チャネルを基盤とした将来の情報通信ネットワーク構築技術として、IPパケット・ATMセルをアドホック網で伝送する形式が大いに注目されている。本研究は防災網、工場・キャンパスLANなどを対象に、階層型自己組織方式を用いた高信頼性無線ネットワーク構築を主眼としたものである。本年度の研究成果をまとめると以下となる。 1) 階層型自己組織網プロトコールとして、粗に配置された基地局から順次リンクを確立する際、リンク単位のチャネル配分に注目し、ホップ単位、ツリーの方向単位、他リンクとの非干渉性重視の3つのアルゴリズムを提示し、通信性能の比較を行った。この結果、ツリーの親リンク/隣接リンクとの干渉を考慮した配分形式が最も優れていることを示した。基地局周辺リンクにはトラヒックが集中するため、複数のアクセス制御の組み合わせが有効であることも明示した。 2) マルチメディアトラヒックに適した有効なCDMA形通信方式としてPRMA/URNの通信性能を検証し、有効性を確認した。さらに本研究の過程で、新たにCDMA/CSMA/CF(Collision Free)方式を発案した。CDMA/CSMA方式自体は既に提案されたものであり、CDMA環境の各符号チャネルにおいてCSMA制御を用いて効率化を図り、今後有望なプロトコールと目されていたが、CSMA特有のパケット衝突が大きな課題であった。本研究ではこれに対して、パケット衝突を完全に回避するCFサブプロトコールを新たに提示し、上位プロトコールと複合することにより、極めて高性能な無線アクセス方式としてプロトコール化を図った。簡易な性能評価において、提案方式の卓越性を部分的に検証している。今後、提案したCDMA/CSMA/CF方式のマルチメディア対応化が次の課題となる。 3) 無線データの伝送誤り制御として、ARQ、FEC、ビットインターリーブの3基本方式を動的に組み合わせ、さらにそれらの各種制御パラメータをも動的に制御する新たな誤り制御法を開発し、その有効性を検証した。
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