研究概要 |
本年度の研究は大別すると、データキャリアの持つ能力を想定した上での公共交通の改善に関する研究と、データキャリア自体の機能を実現するためのハードウェアとしての能力を備えた装置の選定に関する研究になる。 公共交通の改善を、単に利用者にとって便利になるというレベルの議論から進めて、利便性の向上を、提案しているシステムの持つ三つの機能、つまり、ゲートレス運賃徴収機能、リアルタイム個別案内機能、詳細需要情報自動収集機能別にできる限り定量化して、社会的便益の向上などとして評価することと、この機能を利用して従来とは異なる形態の輸送サービスを行うことによる輸送の質の向上、輸送コストの減少などに分けて論じる。 これらに関する研究の現状は以下のとおりである。 1. ゲートレス運賃徴収による改善は、駅施設の簡素化、旅客動線の短縮、手続き所要時間(待ち時間を含む)の短縮、現状の不完全な自動改札システムによる正当な旅客への不快感の軽減、現状の不完全な自動改札システムによる運賃補脱の軽減、などについて定量化を進めている。一方、データキャリアと旅客との対応関係を完全につけることが難しい問題があり、この面での負の効果も推定する必要がありそうである。 2. リアルタイム個別案内による改善は、不慣れな乗客にも利用できるようになることによるものと,従来から利用している乗客の所用時間短縮,快適性の向上が主である。 3. 詳細需要情報自動収集による改善は、輸送資源の適正配分による着席率の向上,待ち時間の軽減などのサービス向上と,無駄の排除によるコストの節減である。 4. 新サービスの可能性としては、案内が困難であることを理由にこれまで採用それなかった複雑で合理的な列車ダイヤが使用できる利点が大きく,これの発展系としてのはみだし停車,運転整理の場面での臨時通過など,従来タブーとされてきたことが使える利点が大きい。 5. ハードウェアの選定に関する議論としては、当初から考えられてきた非接触型のICカードに加えて,携帯電話・PHS,ポケベルや玩具類など,各種の携帯情報端末の可能性を調査している。
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