今年度における研究の成果は以下の通りである。ジャズセッションにおけるコードパートの演奏について、そのコード進行ならびにコードのテンションを考慮して、感性情報を抽出する方法を試みた。具体的には、コードの連続性に着目して、過去のコード演奏(今年度は一つ前のコードのみを扱っている。)を考慮して、現在のコードとのつながりを利用して、感性情報を抽出するものである。一方、テンションについては現在のコードのみに注目した。その二つのデータに経験則から得た重みをつけて、感性情報の盛り上がりを求めてみた。その結果、いままでのコードのみによる感性情報の抽出に比べて、感性の連続性が良くなり、より実際的な感性の盛り上がりを表現できたものと考えられる。データとしては市販のスタンダードMIDIファイルの曲をシーケンサで演奏したものを用いた。この内容については3月25日からの電子情報通信学会総合大会において発表した。 また、リズム奏者の感性情報については、最初の方針と若干異なり、厳密なビート抽出は行わず、今回は簡易な方法で行い、また、ビートの揺らぎによりは、むしろ、リズムパターンに注目した。リズムパターンの変化は、何らかの主張があるものと考えた。変化を調べた結果から、演奏の区切りを他の奏者に合図するための外向的主張度と本人自らの感性の盛り上がりを与える内向的主張度を区別する方法を提案した。それによって、本人の感性の盛り上がりが明確になった。今年度は、データ量を増やすなど、その内容を拡充した。 今後は、これまで得た感性情報の映像表現の試みを行いたいと考えている。なお、当初の予想に反し、演奏者の不足により、実演奏からのデータ収集やインタラクションへの試みについては多くの課題を残している。
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