この2年間の研究において、得られた知見は以下の通りである。 感性情報については、各パートからの音楽プリミティブデータからの抽出を積極的に行った。その結果、コード演奏については、感性情報の一つである緊張感について、連続性を重視し、演奏時以前のコードを考慮する方法を提案し、従来の方法より大幅な改善が見られた。しかし、今後の展開には、調性を正確に知る必要性が分かり、2年目は、その処理を行った結果、感性情報についての結果が良好なものとなった。 また、リズム楽器については、ドラム演奏において、使われる楽器の種類を考慮することによって、以前に提案していたリズムキープと奏者の感性との分離結果が改善された。 また、2年目に購入したベースについては、ベースが調性の決定に重要な役割を果たすことより、ベース音を利用することによって、従来行っていた調性決定結果が大幅に改善された。ただし、ベース奏者の感性については調べるには至っていない。 メロディ奏者については、スケールからの逸脱度による緊張度を求めることができた。また、クロマチックスケール演奏の部分と符合していることが分かった。 研究課題の中で、ビート揺らぎの処理が残った。さらに、この研究の重要な課題であった感性情報の画像情報への変換ならびにそれを用いたフィードバックを利用したインタラクションシステムの構築は時間の制約上、全く為し得なかった。従って、本研究の総合評価をするに至らなかった。 研究費の主な使用については、1年目は、データ処理用のパソコンの購入とそのソフトの購入に当てた。2年目は、ベースの購入と学会発表の為の旅費、本学学生を使った生演奏の謝金であり、その他は、スタンダードMIDIファイルなどの消耗品の購入に当てた。なお、今までに得られた知見を、生演奏者で試し、本人の感性と一致するかを調べる予定であったが、これも時間の制約上、知見として発表するところまでに至っていない。 なお、コード演奏について得た知見は、1998年春と1999年春の電子情報通信学会総合大会において、2度にわたり、口頭発表した。
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