研究概要 |
本研究は,網膜血流の日常的計測診断を実現するため,光学的な網膜血管径実時間計測法を開発し,レーザー血流計に搭載することにより,眼底血流"その場"解析システムを確立することが目的である.平成11年度に得られた研究実績は以下の通りである. 1.血管径算出のための信号処理アルゴリズム開発 リニアセンサの走査信号に2種の移動平均を施し,雑音と低周波揺らぎを除去したのち微分する信号処理ソフトを開発した.これより市販レベルのパーソナルコンピュータを用いて,許容精度を維持しつつ,1計測当たり32ミリ秒以下の処理速度で血管径を良好に決定できることを確認した. 2.モデル実験とヒト網膜実験による評価 最初に,反射率チャート紙とウマ血液を用いた擬似血管モデルで校正を行い,誤差5%以下を確認した.次にヒト網膜にて眼底カメラ経由のデジタルビデオ動画記録と本測定の実時間比較を行い、高い相関を得た.よって本方法が簡易性と実時間性を備えた有効な血管径測定法であることを確認した. 3.レーザー網膜血流速度計への搭載とシステム化 今回試作した血管径計測ユニットをすでに開発済みのレーザー網膜血流計に組込み、血流速度計測と同時に血管径信号を取得・解析できるよう,システムを変更した.また,眼球運動による位置ずれを検知し自動的に再測定する機能を付加して、動・静脈の判別と血流速度・血管径・血流量比をほぼ実時間で測定・表示できるシステムを完成させ,眼底血流"その場"解析システムを確立した.
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